おーっと、これは思わぬところからの攻撃ですよ!

WT/太刀迅、最迅、遊悠、19歳組、チームB。絵を描いたり文章を書いたり。
WT/太刀迅、最迅、遊悠、19歳組、チームB。
絵を描いたり文章を書いたり。

1月新刊の小説のほうの一部です。アンドロイドパロ嵐迅。

どれくらい文字打てるのかなーってテストも兼ねて。


 コツコツ。

 うっすらとゆっくりと目を開く。

 コツコツコツ。

 ガラスを指でノックする音が聞こえる。
 そちらのほうに目線を向けると、そこに立っている男がマイクを通して声をかけてきた。
「そろそろ起きなよ、A-05」
 目を擦りながら身体を起こす。欠伸をしながら身体を伸ばす。目にじんわり涙が溜まる。ブルーの瞳をした男が扉から入ってきて俺の目の前に立った。
「おそよう、アラシヤマ」
「……おはよう、博士」
「飯作っとくから、さっさと着替えて顔を洗ってきてね〜」
 まだ目を擦っている俺に、この「博士」が一声かけて、背中を向けて出て行った。
 「アラシヤマ」というのは俺の「名前」。少しでも人間っぽくなるようにとのことで博士がつけてくれた。結構気に入っている。少なくとも、「A-05」と呼ばれるよりは好きだ。博士の名前は教えてもらっていない。物心ついたときから「博士」と呼んでいたから、それが名前みたいなものだ。
 顔を洗って髪を少し整え、そして鏡を見る。人間とそんなに違いないように見えるが……。鏡に触れるとひやりとした温度が伝わってきた。俺自身の頬にも触れる。温かい。でもこれは人工血液の温度なのだ。以前そう博士が教えてくれたことがある。
 博士は人間で俺は博士に造られた多目的自律型の高性能バイオヒューマノイド。正確には、多目的自律型トリオン兵とも言う。まあ簡単に言えばアンドロイド、そのプロトタイプだ。博士が死んだら俺はメンテナンス等々の問題でそのうち壊れていくのだろう。それはまあいいのだけれど……博士より先に死ぬことはない……。それが俺の気を重くさせる。小さく溜息を吐く。あと何年生きられるのだろう。博士は。そして俺は。
 博士がいなくなったら、俺は何のために動き続ければいいのだろう……。
 頭をがしがしと掻きながらリビング(と博士が呼んでいる部屋)に行くと、俺の分の朝食が用意されていた。
「美味そうだな!」
 そう言ってトーストに手を伸ばした俺に、博士が一言ぴしゃりと言った。
「いただきますは?」
「……いただきます……」
「礼儀はちゃんとするんだよ、アラシヤマ」
 博士は俺の育ての親でもある。自分は物を飲みながら本を読んだりするくせに、俺への躾はなかなかに厳しい。それがちょっと不満だ。
 食事が終わった後の片付けは俺の仕事。作ってもらったのだから食器の洗浄と片付けくらいはする、というのが博士の考えだ。これはまあ、同意だ。
「博士のカップも洗おうか?」
 博士は一瞬の間をおいて、「いや、いいよ」とだけ言ってカップをテーブルの上に置き、本からは目を上げなかった。
 今日は何の本を読んでいるのだろう。
 博士はいつも静かにお茶を飲みながら本を読んでいる。俺の前で眠ったり、食事を摂ったりすることはほとんどない。「ここ」には何万冊という本があるから、博士も飽きることはないのかもしれない。
 「ここ」は名前もないような辺境の乱星国家だった、すでに朽ちた星だ。俺たちが生活している施設は、設備がほぼ完璧に整えられているから、住むのに困ることはないけれど……。
 博士以外の「人間」を、俺は見たことがない。俺がどこで造られたのかも、実は定かではない。「ここ」も「ここ」以外も、世界は俺にとって知らないことだらけだ。俺にとって世界は博士だけで、博士が世界だ。それをつまらないと思ったことはないけれど、博士がいなくなった後、俺はどうなるのだろう。そんな不安はあった。
「お前が生きていくことに不便を感じるようなことはしないよ」
 博士はそう言うけれど。
 不便とか不都合とか、そう言ったことではなく、単純に寂しい。
「大丈夫、お前はアンドロイドだから、『寂しい』という感覚もプログラムだよ」
 消そうと思えばすぐに消せるよ。博士はいつもそう言った。
 博士は俺と会えなくなって、寂しいと思ったりはしないのだろうか。時折そんなことを考える。
 毎日同じような日々が静かに繰り返され、時間は淡々と流れていき、四季の花が開いては散る。雨が降ることも風が吹くこともあったけれど、大きな出来事があるわけではなく、穏やかな日々が続いた。

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